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「かるさん」誕生ストーリーと冬のおすすめ

2022年10月作成

 最近、石徹白洋品店のボトムスを試着してくださるお客様の間でご好評いただいているのが、「かるさん」

 石徹白洋品店をご愛顧して下さっている皆さんにとって、「たつけ」と「はかま」は、なじみのある方も多いかと思いますが、「かるさん」についてはあまり情報が出ていないので、謎めいた存在かもしれません。

 

 実は、テーパードパンツ「かるさん」は、スリムパンツ「たつけ」とワイドパンツ「はかま」のいいところどりをした使いやすいズボンなのです。

 そこで今日は、「かるさん」の誕生ストーリーと、今冬のおすすめをご紹介します。


「たつけ」と「はかま」の間のかたち

 私たちが石徹白でお世話になっている方のお一人が、上村敏治さん。敏治さんは、現在、80歳。石徹白で受け継がれてきた服の伝統に詳しく、いつも、いろいろなことを教えてくださいます。

 「こんな形の、たつけもあるんじゃよ」と見せてくださったのが、敏治さんのおばあさんである「まつさん」が着ていたズボン。まつさんにとって、「たつけ」では細すぎる、「はかま」では太すぎる、というところから、自分にピッタリの形を作ろうと工夫して生まれたのが、この形でした。

 私たちは、「まつさん」がつくられたズボンを参考にして、作ってみました。すると、その当時のおばあさんの気持ちがありありと伝わってきました。

 とても履き心地がよくて、締め付けるところがない。ゆったりとしているのだけど動きやすい。裾が細くなっていて動きやすいたつけの良さと、腰回りから太ももにかけてゆったりとしてリラックスできるはかまの良さが両方とも感じられました。

 

ポルトガル語から来た言葉
「かるさん」

 「まつさん」がつくっていた、「たつけ」と「はかま」の間のズボンには、もともと、特に名前はありませんでした。

 石徹白で「はかま」のことを「かるさんばかま」と言うお年寄りがいらっしゃったので、私たちはそこから、この「まつさんのズボン」のことを、「かるさん」と呼ぶことにしたのです。

 そんな時に、あるときお客様から、「かるさん」はポルトガル語で「ワイドパンツ」のことを指すんだよ、と教えていただきました。「カステラ」が、ポルトガル語由来の言葉だということは聞いたことはありましたが、同じ時代に、「裾幅が狭く膨らんだズボン」をはいていたポルトガルの宣教師の姿から、「はかま」のことを「かるさん」と呼ぶようになったそうなのです。

 

 石徹白は山奥の集落ですが、古くから白山信仰の拠点として栄え、外からさまざまな人たちの往来がありました。海外からの伝来品ももしかしたらここまで入ってきていたのかもしれません。古の知恵に学ぶことは、何も日本の狭い地域のことだけではなく、こうして遥か昔の外国との交流の中から学ぶこともあるのだと、感銘を受けました。

 

体型を問わない形とサイズ展開

 「かるさん」を復活させるにあたっては、試行錯誤がありました。「たつけ」や「はかま」と違って、もう作り方を知っている人がいない服です。「まつさん」のズボンをじっくり観察しながら、裁断も無駄のない方法を試行錯誤して完成させました。

 こうして、「まつさん」のアレンジと、私たちの試行錯誤の末に完成したのが、「かるさん」です。

 私たちは「かるさん」を3サイズ展開にして、小柄な方からビッグな方までお使いいただけるようになっています。「たつけ」「はかま」と同様に、皆さんに愛していただけたら幸いです。

 それでは、この冬におすすめの「かるさん」を2つ、ご紹介しますね。


レスキューデニムかるさん

 大量生産の過程で廃棄される運命にあった生地を買い取り、レスキューしたシリーズ。

 肉厚のデニム生地を使って仕立ててあります。
 丈夫なのはもちろんですが、意外と柔らかくて、使えば使うほど馴染んできます。インディゴ染めなので、ウォッシュアウトしていく風合いも素敵なので長くハードにお使いいただけます

 

[かるさん]レスキューデニム / ネイビー ¥33,000


ウールのかるさん

 とにかく温かいブラックメリノウールのかるさん。カラーはブラウンとグレーの2色あります。
冬、インナーを重ね着する方が多いと思うのですが、腰回りがたっぷりしているので重ねても気にならないです。足裾がテーパードかかっていて風が入らないのでより一層温かです。

[かるさん]ウール(ブラックメリノ) / グレー ¥55,000

[かるさん]ウール(ブラックメリノ) / ブラウン ¥55,000